創作した小説が世界の神話になっていた頃
[第二部・第十六話:高熱]
どうやら、フルドの言う貴族の名も『カルロス』であると判明したところで、レオはもう一度(今度はフルドに)断言した。
「いい。会わない!」
「え、えええ!?」
黒竜同様に驚くフルド。
彼らには頑《かたく》なに拒む理由が解らなかったが、ショーンは察して頭を痛める。
「あのなぁ、あの時の男とは別人かもしれないぞ」
「じゃあオヤジは、別人だと思うのか?」
逆に訊かれた。
「……いや。かなり怪しい」
ショーンの言葉で、決まったも同然だとレオは思う。
約一週間前、都近くのアジトの上にて、車を停めてある場所で出会った奇妙な二人組に違いない、と。
ショーンも玲菜も気付いたが、ショーンはあの二人だとしたらずいぶん早いと驚愕する。
(俺たちは車で移動してたんだぞ? 確かに砂漠を迂回したから、向こうがラクダで直進していたらこんなもんかもしれねーけど。いや、それより情報を掴むのがありえない速さだろ)
グリーン町に来たということは、なんらかの方法で『近辺に反乱軍が居る』と知ったに違いない。まさか『緑龍城が実は本拠地』だということはバレていないだろうか。
(いや、まさかな。それを知っていたら緑龍城の方に来るだろう。近辺に出没する噂を知っただけだな)
だとしても、極秘なので恐ろしい。ましてや彼は裏切り宣言をしているが貴族。
(気を付けねーと。組織がでかくなればなるほど情報が漏れやすくなるからな。本拠地がバレて攻められたら堪ったもんじゃねーし)
ショーンがいろいろと考えていると、カルロス面会の話を打ち切ろうとするレオの姿が。
「ちょっ! ちょっと待て、レオ」
ここで貴族を突っ返すのはあまり得策ではない。しかも突っ返す理由が首領の個人的な感情。
「お前の気持ちは解るんだけども、会わずに断るなんて……」
「この前会った」
「いや、だからなぁ」
もしかすると本当にオイシイ話かもしれない。
情報収集力や追跡力。これらはひょっとすると――
「金が無ぇーんだよ」
ショーンは爆弾発言をした。
「え?」
当然驚くレオと玲菜。
本当は言いたくなかったが事実。
「お前、いつまでも皇子と思うな」
ショーンは心を鬼にした。大事なことなのでもう一度告げる。
「金が、無いんだ」
「……え?」
驚いた顔をしているのはレオと玲菜だけで、同じ場に居た後の二人は分かっていたように気まずい顔をする。
レオは首を傾げた。
「オヤジの?」
あまりに呑気すぎて頭を押さえるショーン。
「レオ、お前『軍事費』って知っているか?」
「え?」
知っているがあまり考えたことはなかった。
組織に入るのも、軍隊の入隊希望するのも個人の自由だが、大きな戦となると話は別だ。馬や武器防具の調達、水・食料、野営用のテントに至るまで……
いくら反乱軍とはいえ、すべてを自己責任にするのは難しく。というか、個人調達の寄せ集め軍隊で正規軍と戦っても敵うはずがなく。
“戦”を起こすには資金が必要となる。
「正直な話――」
軍事費の現実に直面する元皇太子殿下にショーンは釘を刺した。
「大食いの皇帝殿がたった今、胃袋に収めた桁外れな食料だって無料ではありません」
「……え?」
焦るレオ。
「バシルが金を取るのか?」
「そーじゃねーよ! バシル殿は金を取らないけど、そうじゃなくてだな。食い物だって金がかかるって言ってんだよ。考えろ!」
なんとなく理解して深刻な顔をするレオは恐る恐る軍師様に訊く。
「えっと、つまり?」
「大きな財力を持った奴の協力は必要だから、カルロスが金持ち貴族なら会った方がいい」
ここで話が戻る。
「彼らの情報収集力や追跡力はもしかすると金の力であって、金持ち貴族の可能性が高いから」
更にショーンはレオに追い打ちをかけた。
「お前の嫉妬ごときで話を蹴るのは惜しい」
「嫉妬?」
玲菜が訊ねてフルドや黒竜まで不思議に思う中、レオは顔を赤くしながら言った。
「分かったよ! じゃあ考えるから。ただ、そいつがどういう人物か分かんねーから、素性を調べてからだ」
その役目は自分だとすぐに察した黒竜は返事をする。
「お任せください、陛下」
「わ、私も」
フルドも名乗りを上げた。
「カルロスという名、実は聞き覚えがあって。もちろん同名の人物はいっぱい居ますが、それなりに財力のある貴族というと心当たりが……。私も調べておきます!」
「ああ、頼んだ。その間、相手は待たせろ。反乱軍に入りたいって気持ちがどのくらい本気かも分かるし」
「承知しました」
とりあえず、味方になり得る貴族のことは調べてからという結論に達して、レオは黒竜に問う。
「話はまだあるか?」
「はい。国や城の様子など、お伝えすることは幾つか」
「急ぎではない?」
「はい」
「なるほど。分かった」
レオは立ち上がって告げた。
「じゃあとりあえず今日は帰る。バシルも含めて会議は後日に。お前らは今言った情報収集を頼む」
黒竜とフルドは頭を下げて命令を受けた。
「御意のままに」
それから忍者たちは挨拶をして部屋から出ていく。
「帰るの?」
玲菜も立ち上がり、最後まで座っていたショーンもゆっくりと腰を上げた。
考え事をしていた風であったが、気分を切り替えて二人に促す。
「そうだな。帰るか」
そうしてバシルとアヤメに挨拶をして、緑龍城を後にした。
玲菜はミリアに言われていた居場所をアヤメに聞いてから。
(っていうかミリア、今度はお菓子屋さんで働いているんだ?)
都ではパン屋だったはず。渡された『居場所を記した紙』を眺めつつ玲菜は思う。
ミリアはグリーン町の北側……緑龍城に近い湖の畔の菓子屋で働いているらしい。
彼女は砦でも料理係であったし、料理が結構得意なのかもしれない。
あの可愛らしい見た目で料理が得意とは、さぞかし男を虜にするのだろうと、ふとイヴァンの顔を思い浮かべる。
玲菜自身も料理はまぁまぁできるが、こちらの世界でそういえば菓子などは作っていない。
(今度お店に遊びにいこう。後、お菓子作り教えてもらおう)
レオの誕生日も近いことだし、是非とも指導してもらいたい。
本拠地に来てから戦等の物騒な話を結構聞いたので、尚更楽しいことを考えたい。
(うん、そうだよ。レオの誕生日パーティーのことを考えなきゃ! 誕生日兼、クリスマス兼、新年祝いになるんだから。きっと楽しいはず!)
たとえ悪夢の日からちょうど二年となろうとも、その日は辛いことを思い出さずにレオを楽しく過ごさせたい。
(三人でパーティーじゃなくて、皆も呼んだらきっと楽しいよ)
ミリアやアヤメやイヴァン……もしかしたらバシルとミズキ君も。一階の居間は結構広いので割と人数が入れそうな予感。可能なら朱音・黒竜・白雷、それにフルドなんかが居たらもっと楽しいかもしれない。さすがに後者の四人は無理かもしれないが。
玲菜はレオの誕生日パーティーを頭の中で計画しながら湖族の村へ戻った。
そしてちょうど村に入って家に向かっている途中。
「ショーン様ぁ〜〜〜〜シリウス様ぁ〜〜〜〜!!」
野太い声を高くした野郎の声が玲菜たちの耳に入る。
遠くから内股ながら凄いスピードで駆け寄ってきたのは黒いモヒカン髪の褐色肌の筋肉男。ムッチムチのシャツを着てズボンを穿き、どことなくオネエ……いや、完全に黒な人物。
「お久しぶりですぅ〜」
ナヨナヨと三人の前に姿を現したロッサムは、近付いて早々レオに頭を殴られた。
「でかい声でシリウスと呼ぶな!」
「はぁんっ」
ロッサムはなぜか嬉しそうに頭を押さえて顔を赤くした。
「シリウス様の愛の鞭、今日も受け取りましたぁ〜」
なんだこのテンション。
ロッサムはショーンにもウィンクをした後、玲菜の姿を見て「ハッ!」と驚いた顔をした。
「あ、あらぁ〜? アナタ……」
じっと見た後に思い出して手を叩く。
「レイナちゃんじゃないの! シリウス様の昔の女の! 久しぶり〜、元気だった〜?」
何か勘違いをしているらしい。すぐにレオが注意した。
「昔じゃない! 昔から、今もだ!」
「まぁあ!」
一瞬ロッサムはショックを受けたようだが、あまり気にする様子は無く、変わらずレオにベタベタする。
「シリウス様、ずっと会えなくてワタシ寂しかったですぅ」
声はやはり野太い。
レオは寒気を感じながら触ってこようとする手を素早く避けた。
「あ、ああ。残念だったな」
そこへ……
「おや、帰ってきたのかい?」
肩までの黒髪を垂らした褐色肌の女性もゆっくりとこちらに向かって歩いてきて姿を現した。
彼女は湖族の族長であり、年齢は三十代後半くらいか。前髪は立てていて、以前はもっと後ろ髪が長かったような気がする。黒い瞳に厚い色っぽい唇。顔の中身がどことなくロッサムと似ているのはそのはず、彼の姉であり。
弟とは打って変わって男勝りで、女性ながら筋肉もそれなりにある。サラシを巻き、半纏を着ての登場は相変わらずだ。名をダリアという。
「シリウス、いつもすまないねぇ、弟が」
「ああ、ダリア。久しぶりだな」
レオが挨拶を交わすとダリアは玲菜の方を見て弟同様驚いた風にした。
「おや? アンタ……確か、レイナだっけ? 憶えているよ」
正直、弟にしても姉にしても記憶力の良さにこちらが驚きそうだが。
「なんか、シリウスと別れて田舎に帰ったって聞いていたけど、ヨリが戻ったんだねぇ」
またもや情報違いにレオは頭を押さえる。
「別れていない。確かに二年間、田舎に戻っていたけど、……こ、婚約者だからな。憶えておけ」
少し照れて言ったので玲菜まで照れてしまう。そんな二人に、ダリアはニッと笑って祝いの言葉を述べた。
「そうなの? おめでとう。じゃあ、シリウスが皇帝の座を取り戻したら結婚するのかい?」
てっきりそうなのかと思って、玲菜は照れたまま俯いたが。レオは「う〜ん」と考えてまさかの言葉を告げた。
「どうかな。それは分からないな」
(え?)
結婚するか分からないなんて、少なからずショックを受ける玲菜だったが。
「その前に結婚するかもしれん」
レオの次の言葉にびっくりして顔を上げる。
「え?」
彼を見るとまた照れてそっぽを向いている様子。
確かに『二年後』という約束だったが、現状難しいのかと思い始めて実感がわかない。
結婚しなくても一緒に居られればいいというか、今一緒に住めているから良いみたいな考えもある。
ダリアは「へぇえ」と声を上げてロッサムに伝えた。
「シリウス、近々結婚するんだってさ、ロッサム。めでたいねぇ」
ロッサムは「え?」と呆然としながら自分の頬を両手で覆い震える声を出す。
「ワタシと?」
どこをどう聞いてそうなったのか。レオは青ざめてショーンは笑いで肩を震わせた。
一方玲菜は戸惑いながら結婚についてよく考える。
(実際、どうやってするんだろう? 籍は無いか。結婚式場予約とかも無いよね? 教会行くとか?)
本来、レオは皇帝なので絶対に立派な結婚式があったはずだった。
(ロイヤルウェディングってやつ?)
まさか、自分がロイヤルなんて。
しかし、今の状態で結婚するとなると……?
(グリーン町の小さな教会で身内だけ呼んで式とか?)
あるいは湖族の村のか。
(それはそれでいいかも)
玲菜としてはこの際、ウェディングドレスだけ着られれば良い気もする。
小さな教会で仲間に祝福されながら愛を誓うなんて……
(それだ!!)
内輪結婚式というのも、まるで映画のようで、玲菜は一人で想像に耽った。
純白のウェディングドレスに身を包む自分と隣に並ぶ新郎のレオ。教会の鐘が鳴り響いて、祝福する友人たち。きっとショーンは泣いて……
「玲菜! 玲菜?」
想像の中で涙を流していたショーンの声に呼ばれて玲菜は我に返る。
気付くとダリアたちと別れて家に戻ろうとするところだったらしく、名残惜しく手を振るロッサムの姿が見える。
レオとショーンはこちらを見て、ボーッとしていた玲菜を心配する。
「何やってんだ? 行くぞ」
「あ、ああ。はい!」
少し先を歩き出す二人に小走りで追いついた玲菜はレオの横顔を見た。
「ん?」
視線に気付いた彼は斜め上からこちらを見て不思議そうな表情をした。
「どうした?」
途端に、先ほどの想像を思い出して赤面する玲菜。
「え? えっと……」
いつ、式を挙げる? なんて訊けない。
「えーと」
訊いていないのに、以心伝心なのかレオの方が言った。
「いつがいい?」
「え?」
「結婚式」
つい立ち止まるとレオも一緒に止まる。
ほのかに暖かい風が吹き抜ける中、ショーンは気を遣ってか小さな声で「先行ってるぞ」と告げて歩いて行った。
彼女の父が離れてからもう一度問うレオ。
「いつにするか、結婚式」
突然の式の話に、玲菜は混乱しかけて先ほど疑問に思ったことを訊いてしまった。
「結婚式って教会?」
「ん?」
想定していなかった質問だが、レオは「ああ」と頷く。
「そうだな、教会だな。お前の望む風にはしたいと思っているけど。何かあるか?」
訊かれても、まだこの時代の結婚式がどんなものかは分からない。幸い、自分の知っているものと大きくかけ離れている感じはしないが。
「う〜んと」
考え込む玲菜に、レオは微笑みかけた。
「考えとけよ。また今度訊くから」
「う、うん」
なんていうか、珍しくも爽やかな微笑みだったが為に顔が熱くなる玲菜。
同時に手も握られて、手も熱い。
(……あれ?)
いや。
手は熱いのか。レオの手が。
(レオの手、熱い)
温かいよりも熱い気がする。
(え? ちょっと待って?)
妙だ。
玲菜は彼の顔をじっと見る。
一見、照れているのかと思ったが、そうではなくて。
(顔が赤い?)
「レオ!」
とっさに手を伸ばして彼のおでこに当てる玲菜。
……熱い。
(え? 熱?)
前に彼が高熱で倒れたことを思い出す。
「レオ、おでこが熱い」
「え?」
「熱があるんじゃないの?」
まさか、風邪か何かか?
ただ、この熱さだと高熱の可能性もある。
(また?)
一瞬、妙な胸騒ぎを感じる玲菜。前に高熱を出したのは、二年前で疲労とされたが。
(また疲労?)
体だけでなく精神的な面でも疲労は有りそうな気がする。
「ショ……ショーン」
慌てて、遠くを歩いているショーンを呼ぶ玲菜。
「大丈夫だよ」と彼は言うが。
「フルドさん!」
同じく二人に気を遣って離れて後ろを歩いていたフルドにも声を掛ける。
「どうした?」
玲菜の声ですぐに駆け寄ったショーンは心配そうな玲菜の表情とレオの顔の赤さですぐに悟った。
「レオ、熱があるみたい」
「大丈夫だから」
彼は平然とそう言うが、ショーンは険しい顔つきをする。
「いや、帰ったらすぐに寝ろ。フルド君!」
「は、はい!」
「支えてやってくれ」
「はい!」
支えようとするフルドに手を向けて拒むレオ。
「いや、平気だ。一人で歩ける」
本当に平気なのか無理をしているのか分からなかったが、玲菜が叱った。
「レオ! ショーンの言う通りにして。帰ったら寝るの。もうすぐだから、フルドさんに支えてもらってよ」
「はあ? なんでだよ」
レオは文句を言ったが、やはり彼女の言うことは素直に聞くらしい。渋々とフルドの肩に掴まって歩いた。
眉をひそめて顔を赤くしながら。
そうして家に着くと、自分の部屋のベッドで寝かされて。大丈夫だとか平気だと繰り返し言いながらやがて眠りに就いた。
なんだかんだで高熱らしくておでこも首も熱いしもちろん頬が赤い。それに寝苦しそうではある。
玲菜はフルドの用意した冷たいタオルを首の付け根などに当てながら泣きそうになって彼の看病をした。
(レオ、やっぱり高熱じゃん。大丈夫じゃないよ)
早く熱が下がってほしいと祈る。
(風邪? まさかインフルエンザ? この世界でインフルエンザに罹ったらどうするの?)
病気の現状は知らないが、すぐに効く薬があるようにも思えないし、とにかく心配だ。
(どうしよう。重い病気じゃないよね? なんで急に)
昨日は元気だった。今日の朝も元気だったように感じるが。というか、本拠地に居た時はそれなりに平気だった気がする。……それともずっと我慢していたのか?
一方、看病する娘と、苦しそうに眠るレオを心配しながら見つつ。ショーンは『急な高熱』が、ある病気の症状であることに気付いて不安がよぎった。
いや、気付いてはいた。けれどたまたまかもしれない、他の原因かもしれないので断言はできない。
ただ、二年前に初めて『急な高熱』を出してから今までも稀にあった。
もちろんそれだけでは判断できない。
だが、一番の理由が前皇帝――つまりレオの父親にある。
赤い砂で体を蝕む病気『肺砂病』の発症は遺伝子にも関係があるから。その病気――通称『赤風』で前皇帝は死んだ。
(ああ、くっそ!)
ショーンは悪い方向へ考えてしまう頭を押さえて首を思いきり振った。
(そんなわけねぇ。いや、もしそうだとしても赤風はそこまで恐ろしい病気じゃねぇし)
そうだ。肺砂病は一種の風土病みたいなもので、罹る者は多いしすぐに死ぬような病ではない。前皇帝の症状の悪化が異常に速かっただけだ。
なぜなら……これは噂に過ぎないが、肺砂病の進行は気持ちによって大分違う、と。つまり生きる気力の少ない者ほど早く蝕まれるのだと。
前皇帝の病気が悪化したのはサーシャ皇妃が死んだ直後だった。恐らく、最愛の女性を亡くして気持ちが死に近づいた。
(レオは大丈夫だろ。玲菜が帰ってきたんだ)
生きる希望を失った父親とは違う。
むしろ前皇帝の気持ちは、自分には痛いほどよく分かる。
最愛の女性を亡くした気持ち。
(俺も、純玲さんを亡くして、絶望に堕ちたし)
その淵から救ってくれたのが一人娘だったわけだが。
玲菜に、最愛の人を失う絶望を味わわせたくはない。もちろん、レオは自分にとっても大事な息子同然。
(やっぱり、ホルクを呼ぶか)
とりあえず現時点は病気が判明していなく、本当にただの疲労で高熱が出ている可能性がある。いや、そうであってほしい。
けれども、一度診てもらった方がいいには決まっている。万が一に判明しても、天才医師なら治せる手段か良い薬を持っているはず。
(そうだな。医療のことはレッドガルムにも調べてもらっているし)
もしくは、帝国に無い知識を外国は持っているかもしれない。
ショーンは密かに朱音を呼んで、賢者・ホルクをここへ連れてきてほしいと頼んだ。このことは誰にも……レオ自身にも秘密だ、と。