創作した小説が世界の神話になっていた頃


 

[第二部・第二十一話:病の夜]

 

 緑龍城の秘密の客室のある前の廊下にて。

「え? 来ない?」

 玲菜が忙しくて緑龍城に泊まりにこられないことを朱音から聞いたレオとショーンは、そもそも忙しいという理由があまり腑に落ちなくて首を傾げる。

 本当は風邪であるが、二人を心配させたくないと玲菜が配慮した理由であり。

「忙しいってなんだ?」

 レオは分からなくて考えたが、ショーンは、もしかするとレオと会う気分ではないのかと深読みしていた。

 昨晩彼女は、帰ってこないレオを哀しそうにずっと待っていたから。

 ショーンはレオにそのことを言おうかと思ったが、余計な問題が起きてもよくないので呑み込む。どちらにしても仕方ないので自分がいつも借りている部屋へ戻った。

 

 一方、残ったレオに、朱音は玲菜から受け取った菓子の袋を差し出す。

「陛下。よろしければ、こちらをどうぞ」

 自分が貰った物だったが、玲菜が本当はレオのために作っていたことを知っていた朱音は、貰った時に『陛下にあげてもいいか』と断りを入れて持ってきたわけであって。

 レオは中身の見えない出された袋に疑問を持って覗き込む。

「ん? なんだそれ?」

「菓子です」

「え?」

「私はもう、数個頂きましたので、後は陛下に、と」

「は? なんでお前食ってんだよ?」

 意味が分からないという顔をするレオに、朱音は「フフッ」と笑いながら答えた。

「一応、私が貰った物ですので」

 ますます意味が分からない。

 朱音が貰った菓子の残りを、自分に渡される意味も分からないし、彼女が何かを隠している風なことも。そもそも貰ったとは?

「レイナ様に」

「え!?

 菓子なんか作っていたのか? いや、それよりも。

「なんでお前が、レイナから!」

「それは……」

 朱音は考える風にして告げる。

「先ほど私が本日のことを伝えに行ったからだと思います」

 なるほど。その時に、作った菓子を……というのは理解できるが、彼女が菓子を作っていたなんて知らなかった。

(なんでだ? 朱音にあげるためではないよな。たまたま作ったのか)

 今日、暇だったから作ったのか、と思うレオに、朱音は自分の予想で教える。

「昨日作ったのだと聞きました。もしかすると……誰かに渡しそびれたのかもしれませんね」

 いくら鈍感野郎でも、そこまで聞けば分かる。

「昨日?」

 自分は、夜帰らなかった。

 主《あるじ》は呆然としていたが、朱音は玲菜の様子が心配なので戻ることにする。

「では陛下、お休みなさいませ」

 頭を下げてからサッとその場を去って行った。

 

 部下が居なくなってから、レオは自分が借りている部屋に戻り。

 ドアを閉めた後に渡された袋を見て大きなため息をつく。そっと開けると、中に入っていたのはいろいろな形をしたクッキーであって。食べるとほのかな甘さが口に広がる。

「ああ」

 なかなか美味い。

(昨日、これを作ったのか)

 そして恐らく自分に渡そうとして。

(レイナ……)

 彼女の落ち込んだ顔が目に浮かぶ。

 レオは自分が昨日帰らなかったことを深く後悔した。

 いや、心配しただろうというのは予想できたことなので、今日会ったら訳を話そうとしていた。訳を話して謝ればいい、と。

 軽い気持ちで考えていた。

「そうじゃねーよな」

 うかつだ。

 

 レオは居ても立ってもいられなくなってタンスから防寒着を出す。

 たとえ到着が深夜になろうとも、今夜こそは絶対に帰ろう、と。彼女の許へ帰って、菓子の礼を言わなければ。それと昨日のことを謝って。

 上着の袖に腕を通しながら今からのことを考えた。

 すぐに家に帰って、明日、朝早くに城に戻ればいいだろう、と。

 

 

 一方、玲菜の許へ戻ろうとしていた朱音は、もうすでに外へ出ていたのだが、ふと考えて足を止める。

 レオの性格と行動パターンなら、もしかすると今から玲菜の許へ戻りそうな予感。

 それならば、自分は行かないで見守っていた方がいいか。

 そう、考えていた矢先に、誰かが自分の許へ近づいてくる。

 振り向くと、それは相棒の白雷で。心配そうに駆け寄ってきて話しかけてきた。

「あ、朱音さん! どこへ行くのですか? こんな時間に」

 彼の質問の意味が分からなくて一瞬呆然とする朱音。質問に対して質問で返してしまった。

「貴方こそ、何をやっているの?」

「じ、自分は、朱音さんがこんな暗い時間にどこかへ行くようだったので……心配で」

 思わぬ言葉に唖然としすぎて止まってしまう朱音。

 白雷は照れながら話す。

「夜道は危険ですし」

 忍びを舐めてんのか。

 正直、朱音はそう思った。そもそもレオを放っておいて自分の所に来るなんて。確かに黒竜も居るけれども、呆れて物が言えない。

 いや、むしろ注意せねばならないか。

「貴方ねぇ、何やってんの! 陛下の傍を離れるなんて。私の心配はしなくていいから、戻りなさい」

 叱られた白雷はそれもそうだと気付いて背筋を伸ばした。

「は、はい! どうかしておりました。すぐに戻ります!」

 慌ててレオの許へ戻るように姿を消した彼を見て、朱音はため息をついた。

「……はぁ」

 彼の腕が立つのは知っているが、性格的に頼りないというかなんというか。

 しかし彼は、昔はさほど頼りない感じではなかったはずだ。

 最近になって、特に自分と居る時に失敗をやらかす。

 それがなぜなのか、この時の朱音には想像もつかなく。それよりもレオが出てくることを想定して行動する。

 

 

 やがて、しばらくすると朱音の予想通りにレオは出てきたので、湖にて用意しておいた小舟を彼の前に着けた。

「あ、朱音?」

「渡りますよね? どうぞお乗りください、陛下」

 相変わらず察しが良いというか用意が良いというか。

 驚きながらも、心の中で感謝してレオは乗り、湖を渡る。

 

 岸に着くと今度は、朱音に命令された白雷が馬を繋いで待っていた。

 歩けない距離ではないが、ありがたい。

 レオは二人に「助かった」と礼を言って馬に乗り、湖族の村の自宅へ向かって馬を走らせた。

 もちろん朱音と白雷の二人も密かに護衛するために後を追う。

 

 

 そうして、着いたレオは馬を庭の繋木に留めて玄関のドアの鍵を開ける。一度、深呼吸をしてから中に入った。

 

 その頃、玲菜は二階の自分の部屋で眠っていたのだが、物音に気付いて起きる。

(朱音さん、来たのかな?)

 彼女はもう一度来ると言っていたのでそうだと思い、まさかレオが鍵を開けて入ってきた音だとは気付かずにベッドを下りる。玄関前で朱音が待っているのではないかと思って部屋を出た。

(鍵開けなきゃ)

 だが、階段を上る足音が聞こえて立ち止まる。

(あれ? 家に入ってきてる? 玄関の鍵閉め忘れたかな?)

「朱音さん?」

 ちょうど声を掛けたその時、階段を上がってきた者と来合わせて、玲菜はその姿にびっくりした。

 女性ではない……というか、

「え? レオ!?

 レオも、部屋から出てきた彼女が寝間着姿だったことに驚く。

「寝てたのか?」

「どうしてレオ、帰ってきたの?」

「なんでお前、朱音だと思ったんだよ?」

 二人とも質問をしていて、会話がかみ合わない。

 

 二人とも、一旦落ち着くために居間に行き、ソファに座る。

 並んで座って沈黙が続き、レオが先に口を開いた。

「ああ、えっと……朱音から、受け取った。……美味かったよ」

 クッキーのことだ。玲菜は俯き、頷く。

「う、うん」

「昨日作ったのか?」

「うん。ミリアの家で」

 返事をしながら、昨夜見てしまった光景を思い出して胸が痛くなる玲菜。

 レオは気まずそうに告げた。

「……悪かった、な。昨日、帰るのが遅くなって」

「あ、うん」

 彼はなんて言うのか、玲菜に緊張が走る。

 レオはゆっくりと白状する。

「実は……昨日は、飲み明かしてしまって」

 それは想像がついていた。朝、ショーンと二人での会話も聞いたし、何より夕方に酒場に入っていくのを目撃していた。

 玲菜は、腹が痛くなったが恐る恐る訊いた。

「誰と?」

「ああ、えっと……」

 彼は言うのをためらったが、正直に言った。

「た……タチアーナっていう、女」

 玲菜が思い浮かべるのは昨日の巨乳美女で、つい言ってしまった。

「茶色い髪の、巨乳美女?」

「なんでお前、知って!?

 決定打か。

 慌て出すレオに怒鳴る玲菜。

「昨日見たの!! ミリアの家から帰る途中!」

 口に出したら涙が出てきた。

「見たんだから」

 彼女が泣き出したのでレオは慌てて弁解した。

「浮気じゃねーよ! そういうコトは何もしてない! ほんとにただ一緒に飲んだだけだし」

「浮気だよ!」

 玲菜にとっては、二人きりで飲みに行くだけで浮気に近い。

「なんで一緒に飲みに行ったの? そういう気持ちがあったんじゃないの?」

「違う違う違う違う」

 必死にレオは否定する。

「違うんだよ! あの女から、俺は聞きたいことがあって。アイツが『酔ったら話す』って言うから仕方なく。でも、いくら飲んでも全然酔わないから。気付いたら朝になってて」

「わあああああ」

 玲菜は今まで我慢していた気持ちが溢れて、声に出して泣いた。

「レイナ」

 彼が触れようとすると拒絶する。

「触らないで!」

 昨日の辛かった想いをぶちまける。

「昨日、ずっと待ってたんだから!」

 両手で顔を覆い、しゃくりあげながら。

「寝ないで朝まで待ってたんだよ?」

 レオは反省して深く謝った。

「ごめん。悪かったよ」

「せっかくのクリスマスイヴだったのに〜」

 これは、彼にとっては八つ当たりに近いか。しかし、自分にとっては重要だった。

 彼は首を捻った。

「なに? 栗? いぶ?」

 意味は分からなかったが、彼女が朝まで待っていたことに申し訳なく感じる。

「……そうだったのか。ごめんな。でももう一度言うけど、その女とは本当にただ飲んだだけで……うん」

 しかし朝帰りはやはり信用度が薄いと思ったのか、レオは案を出す。

「もし、信じられないんだったら酒場の店主に訊いたっていいぞ。俺たちはカウンターで飲んでいたから店主は見ていただろうし。俺は酔わない程度にしか飲んでいないから、ちゃんと意識もあったしな」

 彼の必死な弁明は恐らく本当で、キスとか性的なことをしたわけではないのは分かったが。だからといって美女と二人で楽しい(?)酒の時間を過ごしたことは許し難く。

 玲菜は泣きながら彼を睨みつける。

 睨まれたレオは困ったように返した。

「なんだよ、信じられないのか?」

 玲菜は涙を溜めながら首を振る。

「信じるけど。……じゃあレオは、私が知らない男の人と二人で飲みに行っても平気なの?」

「え?」

 思ってもみなかった例えだったらしく、レオは一旦止まったが。少し考えてボソボソと答えた。

「べ、別に……何も無いんだったら、酒くらい」

 恐らく、真剣に想像していない。

 玲菜は腹が立って言い放った。

「じゃあ、行くから! いいね!」

 そこで初めて真剣に考えてレオは止めてきた。

「はあ? ちょっと待て! 駄目に決まってんだろ! 何言ってんだ」

「でしょ?」

「え?」

「でしょ!?

 強く言われて、自分の浅はかさに気付く。いや、本当はタチアーナと二人で行くのは良くないと分かっていた。しかし……正体が知りたくて。

(でも、やっぱ良くなかったな。何もしていないからいい、じゃねーよな)

 自分だって、彼女がカルロスと偶然に会ってタオルを貸しただけで不快な気分になった。

 昨晩の自分の行動は、彼女はもっと辛い気分だったに違いない。

 レオは軽率だった昨夜の行動に自己嫌悪した。

「ああ」

 頭を押さえて、もう一度謝る。

「ホントに、悪かった。これからは気を付けるから。心配かけたことも、すまない」

 それと大事なことは何度でも言う。

「でも、これだけは分かってくれ。俺は絶対にお前を裏切ったりしない」

 彼女以外の女性となんて、ありえない。

「お前の居ない二年間も、俺はずっとお前だけを想っていたんだ」

 

 すると、間を空けてから彼女は顔を上げる。

 その顔が赤くて、最初は照れているのかと思った。

 だが違った。

 

 辛そうにしている様子でレオは気付く。

「あれ? お前、もしかして具合悪い?」

「あっ……えっと……」

 玲菜は興奮したが為に下がってきていた熱がまた上がってしまっていた。

 顔が不自然に赤くて、レオはおでこに手を触れさせる。

(熱い)

「お前、熱があるんじゃねーか!」

 つっこんで初めて、レオは彼女が寝間着姿だった理由に気付く。城に泊まりに来られなかった理由も。

「お前……寝てたのか?」

「大丈夫、ただの風邪だから。さっき熱が下がってたし」

「でも今熱いぞ」

「多分、夜だから」

 夜だから、ではない。

 レオは頭を押さえる。

「お前、俺が来たから無理して起きて」

 なんてことだ。彼女の様子に気付かずに悪化させるとは。

(どうして俺は、こいつを苦しめることばかり)

 

 レオは玲菜を抱きかかえて二階に連れていった。

 彼女は「大丈夫だよ」と慌てたが問答無用。ベッドに寝かせて布団を掛ける。

「悪かったな、気付いてやれなくて。お前はもう寝ろよ」

「うん……」

 玲菜は喋りながら目を閉じた。

「ごめんね。……来てくれてありがとう。私は平気だから……レオは緑龍城に……」

「居るよ、ここに」

 城には戻らずに、朝まで看病しようと心に決めたレオは静かになった彼女の頬に手を触れさせる。

 頬も熱くて赤い。

「なんでお前が謝るんだよ」

 彼女は何も悪いことをしていないのに。

 さっきは触れようとしたら拒まれた。いつもよく泣いてしまうが、あんな風に声に出して泣くなんて。

(俺のせいだよな)

「レイナ……」

 レオは目を閉じている彼女に軽く口づけをしようとしたが、直前で玲菜の口が開く。

「レオ……風邪が移るから」

 実はまだ眠っていなかったらしく、目をつむりながら手を自分の口にあてる。

 

 しかしレオはその手を優しく退かした。

「いい。俺に移せよ。それでお前が治るように」

 

 今度は玲菜が止める間も無く唇を触れさせる。

 

 離すと、玲菜はまた途切れ途切れに言った。

「レオ……駄目だよ。レオが風邪……引いたら、皆が……困っちゃう」

「気にするなよ」

 更にキスを続ける。

 

「お前にキスして俺が風邪引いたら、俺の責任なんだからさ」

 ただ、病人なので、そこは考慮した方がいいか。

「でもお前が困るならやめるけど」

 

「……困らないよ」

 

 それならば、とレオはもう一度長いキスをして。

 さすがにこれ以上は熱が上がるかもしれないと思い、抑える。

 彼女が眠るまで、優しく頭を撫でた。

 

 

 やがて、ようやく眠りに就いたらしく。

 レオは椅子に座ったまま、静かに眠る玲菜をじっと見つめた。

 明日には元気になってほしいと願いながら。

 

 

 ―――――

 

 レオの想いが通じたのか、翌朝になると玲菜の熱は下がる。

 まだ微熱はあったが、一日安静にしていれば平気なくらいで、玲菜は起き上がって一階に下りた。

 昨夜レオが帰ってきたのは恐らく夢ではなく、しかし、もう居ないようなので城に戻ったのだと解釈。台所に行き、朝食をとろうとすると、テーブルにパンやコップなどが置かれていた。

 多分、彼なりに玲菜の朝食を用意したつもりだったのだろう。

 食欲が戻っていた玲菜は、彼の心遣いを嬉しく思ってパンを食べる。ふと、置手紙もあったのでそちらに目を遣った。

 

『朝食、一緒に食えなくて悪かったな。俺は城に行くから。お前も元気になったら来い。夕方に朱音をよこす』

 

 手紙にはそう書いてある。

 雑な字にクスッと笑いながら、玲菜は今日一日の予定を考えた。

 今日は、洗濯は無理なので片付けや掃除を少ししよう、と。午後になったらまたひと眠りして。その後きっと朱音が訪ねて来るのだろう。

 玲菜は、心に決めたことがあったので、彼女が来たらそれを伝えようと思った。そして……

 

 

 

 予定通りに一日を過ごして、夕方に訪ねてきた朱音に朝決めた意思を伝える。

 それは、城に行かないということ。

 微熱があるからではなく、しばらくは。

 いや、厳密にいうと明日、アヤメたちと会って裁縫の続きをするために緑龍城に行くのだが、つまり泊まらないということ。

 なぜなら、玲菜の心には自立しようという気持ちがあった。

 今のままレオやショーンの二人にくっついて行動している状態だと、二人に依存している気がするので。

 これからこの世界で一生を暮らしていくと考えるとあまり好くない。

 自分一人でも、日々を過ごして……寂しくなったら会いに行こう、と。

 それまでは二人の帰る家を守っていきたい。

 

 朱音は、玲菜の気持ちを汲んで、レオにそのことを伝えるために戻っていった。

 

 

 玲菜は一人になったが、ウヅキも居るのでさみしくはなく。食事も一人分作って食べて眠った。

 そして、次の日はすっかり元気になって緑龍城に向かう。

 予定通りにアヤメたちと会って裁縫室でレオの誕生日パーティー用の衣装を作った。

 その、お昼の時間には、レオやショーン、バシル将軍とも一緒に食事をとることができたので心の充電をする。帰りにはミリアと二人で帰って、ウヅキの待つ家へ戻った。

 

 その次の日は天気も良いし暖かいので朝から洗濯をして春の風を心地良く感じる。

 もう桜も咲いていて、日向ぼっこをしているウヅキを見ると心が和む。花見をしたいと思いながら午後は買い物に出た。

 街ではもう年末なので忙しく歩いている人が多いし、大売出しをやっているので欲しい物は安く買うに限る。グリーン町の方にまで出向き、サイの都の噂も耳にした。

 それは……新年に皇帝から重大発表があるという事。

 恐らくあまり良い事ではない予感がしたが、玲菜は気にせずに買い物を続ける。更に、どこかで暴動が起きているというような物騒な噂も聞いた。

 

 

 更に次の日。ここの暦ではもう十二月二十九日。そういえば、“二年前”ではこの日に自分が時空の渦へ行ったのだと思い出しながら、玲菜は緑龍城に行って最後の仕上げの裁縫をする。

 しかも、裁縫は午前中で切り上げて、午後はミリアの主導でお料理教室。

 厨房を借りて、三人で誕生日用ケーキの練習をする。

 その日は忙しくてレオたちとは会えずに一日が過ぎた。玲菜は残念に思ったが、明日の大みそかには二人が帰ってくると信じて家に戻った。

 

 

 レオの誕生日である新年――二年前では悪夢に変わったあの日と同じ日付は、もう明後日に迫っていた。


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