創作した小説が世界の神話になっていた頃


 

[第五十話:崩御の日]

 

 もしかしたら。

 自分とレオは結ばれることはないのかもしれない、と。

 玲菜は漠然と感じた。

 自分はこの世界にいるはずのない人間で。前に盲目の魔術師に言われた通り、死者みたいなもの。

 自分たちの行為があと少しという所で運命の邪魔が入るのは“そういうこと”ではないかと。

 思ったところで我に返る。

(私、何考えてんの。こんな時に)

 

 皇帝が……彼の父親が亡くなった。

 そんな大事な報せに。

「……くたばったか」

 彼が最初に発した言葉がこれで。

 その、あまりの平然さに玲菜は声が掛けられなかった。

 彼の瞳は凄く冷たく、何も映していないようだったから。

「勝手に死んだのか、アイツは」

 次の瞬間、レオはベッドを思いきり殴った。

「くそっ! 俺がいつかアイツの息の根を止めてやろうと思ったのに!!

 同じベッドの上に居た玲菜はその言動にビクッとする。

「レ、レオ……!」

 呼ぶと、玲菜をギュッと抱きしめて。間を空けてからそっと呟く。

「俺は、アイツが憎かったんだ」

 

 それ以上は言わない。この間にも朱音が呼ぶ声が聞こえて、レオは玲菜に謝った。

「ごめん。……レイナ」

 恐らく『続きはできない』ということ。

 玲菜は頷いた。

「うん。分かってる」

 皇帝陛下の死なんて大事、無視できるはずがない。

「レオ、早く行きなよ」

 ましてや皇帝は彼の父親。レオは、口では平然と罵詈《ばり》しているが、きっと気が気ではない。たとえ本当に皇帝を恨んでいたとしても。いや、だからこそ、複雑な想いが交差する。

 玲菜は自分からレオと離れて、床に落ちていた彼の服を拾って渡す。

 彼は黙って受け取り、服を被りながら自分を呼ぶ朱音に向かって言い放った。

「もういい朱音! 呼ばなくても。すぐに行くから」

 その後は廊下も静かになり、玲菜も自分の寝間着を着ていたら、着替え終わったレオが玲菜の手を握ってきた。

「え? あ、あ、レオ?」

 手を掴まれては着替えられなくて戸惑っている玲菜に、何度も何度もためらってからレオは言う。

「レイナ、頼みがあるんだ」

「え?」

 彼は一言一言をゆっくりと、消え入りそうな声で告げる。

「俺の……傍に……居てほしい」

 若干手が震えている。

「俺が、俺でいられるように、近くに……」

「居るよ!!

 意味が解って、玲菜は手を握り返した。

「私が、傍についてるから! 一緒に行く!」

「……ありがとう。すまない」

 安心したように手を離した彼を、玲菜は優しく包み込んだ。

「大丈夫だよ」

 こんな時なのに、玲菜は嬉しく思った。

 彼はきっと心が不安定になっている。けれど、自分を必要としてくれている。

「レオ……!」

 なぜだろうか。皇子で民衆にとって守り神とも呼ばれる彼を守りたい。彼には優秀な護衛がいるのに。どちらかというと自分の方が守られてばかりなのに。

 アルバート皇子でもなく、シリウスでもなく、彼をレオとして守っていきたい。

 

 しばらく抱きしめながら心に決めた玲菜は、離れてから急いで服を外行き用に着替えた。特に迷わずにサッと着替えて、彼の前に立つ。

「で、どうするの? またメイドさんのフリする?」

 あまりの素早さに呆然としたレオは「ハッ」として自分も立ち上がった。

「ああ、そうだな。従者のフリを。俺は防寒着だけ上から着てまず屋敷に行くから。そこで着替えてすぐ宮廷に入る」

 決まった所で、一先ず朱音の前に姿を現さなければ。

 レオは部屋から出ていく時にドアを開ける直前で玲菜に軽くキスをして、耳打ちする。

「続きは今度必ず」

 そして玲菜が顔を赤らめたのを見てから廊下に出ていく。

 玲菜の部屋から出てきた二人に、廊下で待っていた朱音は安心して、ショーンは戸惑ったようにした。

 もちろん玲菜とレオもショーンの方をまともに見られない。

 レオは無言で階段を上り、ついていく朱音に、玲菜がバスルームに置いてあったタオルを慌てて渡した。

「朱音さん、コレ。風邪引きますよ。着替え貸しましょうか?」

「え?」

 彼女はびしょ濡れだ。

「ああ、ありがとうございます。着替えは平気です、ありますので」

 軽く拭いてタオルを返した朱音は、玲菜の格好を見て首を傾げる。

「レイナ様、寝ないのですか?」

「あ、あの。私もついていきます」

「え?」

 驚きの声を上げたのは朱音だけでなくショーンもだ。

「レイナ、アイツについていくって? 何言ってんだ」

「心配だから。一緒に行くの」

「し、心配って……!」

 ショーンは納得していなかったが、朱音は玲菜に頭を下げた。

「助かります。ありがとうございます」

 

 一方、レオは一度自分の部屋に入って防寒着を着て出てくる。

「すぐ屋敷に行く。馬車の用意は?」

「あります」

 そう言って朱音は一足先に外に出た。

 ショーンは未だに状況が掴めずに、玄関の前に立つ二人に声を掛けた。

「今から城へ? 二人で?」

「ああ。まず屋敷に行って着替えてから行く。レイナには俺が頼んだんだ。従者のフリしてついてきてくれって」

 レオの答えに、ショーンは理解して深くは追及しなかった。

「そうか。解ったよ。気を付けて」

「オヤジ、すまない。でも聞いていただろ? 陛下のこと。俺は多分忙しくなっていつ帰れるか分からないんだけど。レイナも連れてってごめん。レイナはもしかしたら先に帰るかもしれないし」

「大丈夫、分かってるよ」

 ショーンは言う。

「俺は助手無しでも平気だから、レイナは好きなだけレオの所に居ていいから。それに城への用は俺もあるから、もしかしたらその時に」

 玲菜はなんだか凄く申し訳ない気分になった。

「ショーン、ごめん。勝手に。私ホントは一緒に調べなきゃいけないのに。あと、家事も」

「うんうん、任せとけ。なんかあったら賢者の特権活かして城に潜り込むから」

 ショーンの言葉に安心した二人は頷き、ドアを開ける間際にレオが言った。

「ウヅキのこと、よろしく。あと、レイナとはまだだから安心していいぞ」

 なんてこと言うのか。

「レ、レオ!」

 恥ずかしくなる玲菜と、即座に背を向けてドアを開けるレオ。

 ショーンは「やれやれ」という風に頭を押さえて二人が出ていくのを見送った。

 

 二人が家を出ると、外は真っ暗で雨が降っていたが、すぐに横から傘を開かれて玲菜はびっくりした。開いた者は恐らくレオの従者で、小さな明かりで足元も照らす。

 前の道路には馬車が待機していて、レオは玲菜に、自分の腕に掴まるように促す。そして歩いて、先に玲菜を馬車に乗せて自分も乗る。

 二人が乗ると雨の中、馬車は動き出してアルバート皇子の屋敷に向かう。その間二人は並んで座っていたが、レオは一切喋らなかったので玲菜も黙って彼の手だけを握る。

 

 

 やがてアルバート皇子の屋敷に着くと、中に通された玲菜はメイドのような服を渡されて従者に扮する。これは皇子の命令で、着替え終わった玲菜が彼の部屋に行くと彼もちょうど準備を終えたように出迎える。

 レオは普段のシリウスのような青い格好ではなく、白のシャツに濃い灰色のコートを着ていてマントも被っていない。

「さて行くか」とだけ言うとまた黙って歩き、玲菜は他の従者たちと歩く。

 また馬車に乗り、停車した場所は宮廷の正門ではなく裏門みたいな場所で。そこで降りて宮廷内に入る。

 

 宮廷内では、燭台《しょくだい》のみの明かりで薄暗い廊下を歩き、立派な扉の前に着くとレオは立ち止まった。

 扉の前は厳重な警備で、何か重々しい雰囲気が漂っている。

 扉番はアルバート皇子に気付くと扉を開けて通す。その先にはたくさんの皇族たちが集まっていて悲しんでいる様子。

 悲しみだけではなく、慌ただしい様子も見受けられる。

 皆、レオの姿を見ると、比較的近しい親族ではない者たちは避けて道を空ける。

 大きくて立派な皇帝のベッドを囲むのは皇妃や皇子・皇女たち。

 玲菜はレオの後をついていったが、途中で他の従者に止められて少し遠くで彼を見守る。その場所からは皇帝の姿は見えなく、彼だけが間近で皇帝の顔を……自分の父の死に顔を拝見する。

 その、レオの表情に全く変化がなかったので、玲菜は逆に胸が苦しくなった。

(レオ……どんな気持ちなんだろう)

 ふと、壁を見ると、綺麗な女性の肖像画がある。それは、間違いなく彼の部屋で見たことのある肖像画と同じ金髪の女性。凛として美しく、青い瞳はレオにそっくりで……恐らく、彼の母親のサーシャ皇妃だと分かる。

 他の女性の肖像画は無い。

 皇帝が、彼女を愛していたのだと明らかに分かる。

 肩を落とす長男や次男、それにすすり泣く皇女たち。前に見た長男の母や茶髪の皇妃(恐らく次男の母)は大泣きしていて、噂を聞いたばかりのカタリナ皇妃と思われる金髪の女性は呆然としている。比較的毅然としているのは正室である皇后様のみ。

 だから、涙も流さずに肩も落とさずに平然としているレオの姿は誰が見ても不自然だった。

 その彼に皇帝の主治医らしき人間が近付く。そして、何かを耳打ちした途端に彼の表情は変わって、主治医が止めるのも聞かずに歩き出した。

 向かう先は玲菜たち自分の従者の方。

 彼は玲菜たちに近付くと「自分の部屋に戻る」と言って、皆が注目するのも気にせずにどんどん進んだ。

 玲菜や従者たちは慌ててついていき、突き進む皇子を止めることができない。

 何も声を掛けられずにただ彼についていった玲菜は、そのまま皇子の部屋に着くと中に入れられて、レオは従者に茶だけを用意させて「呼ぶまで来なくていい」と各部屋に戻らせる。

 

 玲菜と二人きりになり、茶を一口飲んで、レオはやっと喋り出した。

「お前も飲めよ」

「あ、うん」

 向かいの椅子に座って、自分用に注がれている茶を飲む玲菜。温かくて落ち着けて、ようやく会話ができそうだ。

「レオ、着いたばっかりなのに」

 そう言うと、レオは不機嫌そうに話した。

「アイツの安らかそうな死に顔を見たら腹が立った」

 聞いて、哀しくなった玲菜は皇帝の部屋の肖像画を思い出す。

「レオ、お父さんのこと、そんな風に言わないで」

 皇帝は恐らくレオの母親とレオを彼なりに愛したのだろうから。

「お父さん? 虫唾《むしず》が走るな。俺の父親はオヤジだけだ。さっき言ったろ? 俺は陛下を憎んでいる、と」

「確かにショーンはお父さんだと思うよ。でも、陛下だってレオのこと……」

「やめろ!! アイツが俺に与えたのは苦しみだけだぞ! それに、母を見殺しにした! そんな奴を父親だと思えと言うのか!?

(お母さんを見殺し?)

 レオの母が病気で亡くなったのは知っている。“見殺し”とは、一体どういうことか。それに、“苦しみ”しか与えられていないと思っているなんて……。

 玲菜は悲しくなって、けれど、彼が泣いていないのに自分が泣いては駄目だと涙をぐっと堪えた。

「俺はアイツとほとんど喋ったことなんて無いし。精々一年に一、二回あるか無いかだぞ。城に居た時だって、姿を見たことなんてほぼ無い」

 レオは拳を握りしめて言う。

「だから。アイツの最期の言葉が……」

 その表情は、酷く思いつめている。

「俺と母親の名前だったなんて……聞いても……」

 

 彼があの場から逃げるように出てきたのはそのためだ。

「レオ!」

 理由が分かって、玲菜は立ち上がり彼に抱きつく。

 彼は俯いて薄笑いまで浮かべているから。

「気分が悪いだけだ」

 そのセリフも表情も哀しくて。

 玲菜はレオの背中に顔をうずめる。

 しばらくそのままでいると、レオがそっと玲菜の手に自分の手を添えてきた。

 その手は若干、震えているような。

 彼はポツリと言った。

 

「俺の母は毒を飲んで自殺した――と、言われている」

 

 聞き間違いかと思った。

 

「表向きは病死で」

 レオの言葉に玲菜は呆然とした。

(え? レオのお母さんって……)

 サーシャ皇妃は病気で亡くなったと、聞いた。

(毒を飲んで自殺?)

 体が震える。

 嘘だと――嘘だと言ってほしい。

 しかし彼が次に発したのはもっと残酷な言葉。

「でも俺は、母は殺されたと思っている。誰かに毒を飲まされたんだ」

 レオは玲菜の手をギュッと握る。

「確かに母は辛い目に遭わされたけど、自ら命を絶つような人間じゃない」

 なんて声を掛ければいいのか分からない。

 玲菜はとにかくレオを包むように抱きしめた。

 彼はきっと心に深い傷を負っている。最近それが分かってきた。自分が彼のためにできることはなんだろうか。ショーンのように彼を支えることが自分にできるか。

 今、傍に居ることで少しでも助けになっているのならいいが。

「レオ……泣いてもいいんだよ」

「え?」

 玲菜は優しく伝えた。

「二人しか居ないし、私の胸を貸してあげるから。思いっきり泣いてもいいよ」

 一応、精一杯の慰めの言葉だったのだが。

「……え?」

 レオは唖然として思ったよりも薄い反応だったので玲菜は一気に恥ずかしさで顔が熱くなった。

「あ、あ、あの、だから……我慢しないでってこと」

 

 しばらく間を空けてからレオは椅子から立った。そしてこちらを向いて軽く笑った。

「うん。じゃあ我慢しないで胸を貸してもらう」

「う、うん」

 玲菜は彼が自分の胸で泣くのかと思い、目を閉じて手を広げて待ったが、レオが掴んだのは両肩であり。なぜか後ろに下がらせてくる。

「え……えぇ?」

 その先にあったのはベッドで、一度座らせると掛布団を剥いでそのまま寝かせてきて。

「あ、あの……」

 玲菜が戸惑う間も無く、彼も横に寝て布団を被り。なんと、本当に顔を胸にうずめてきた。

「わっ……ぁあっ!」

 うっかり変な声出した。

 恥ずかしくて口を押える玲菜。

 だがレオはお構いなしに呟く。

「いいな、これ。落ち着く」

(落ち着かないよ〜〜〜!)

 心の中で玲菜は嘆いたが、彼のために我慢するしかない。

 彼は何度も顔を動かして向きを変えたりしたが、調子に乗って手まで添えてくる始末。それでも玲菜は我慢したのだが、ついに我慢の限界を超える言葉を発した。

「ちょっと足りないな」

 今、なんて言ったのか。

 玲菜はブチ切れた。

「じゃあもう貸さないっ!!

 レオの頭を掴んで自分の胸から退かす。

「退いて! どいてよ! 小さいって言いたいんでしょ?」

「い、いや、足りないって言っただけで、小さくは……ないと、思うぞ?」

 今更慌てても遅い。

「大きくもないけど」

 彼の言い訳は明らかに下手で配慮が足りない。

「だから、レオの好みじゃないんでしょ?」

「好み?」

「巨乳が好きなくせして!」

 ……返事が無い。

 玲菜が睨むと彼は慌てて答えた。

「そ、そんなこと……ないぞ。多分。別に大きくなくてもいい」

「嘘!」

「嘘じゃない。俺は、お前のだったらなんでも満足する」

「満足しないよ! だって、“足りない”って言ったんだよ? 満足してないじゃん!」

 玲菜のつっこみは的を射ていて返すのが厳しい。

「いや、あれは……つまり、冗談で。お前の反応が見たかったっていうか」

 彼の声は段々小さくなっていく。

「お前がこんなに怒るとは思わなかったから」

 そんなことを言われると、まるで凄く気にしているみたいで嫌だ。

「別に、怒るっていうか。ただ、失礼じゃないのよ」

「分かった。悪かった。分かったよ」

 レオは良かれと提案を出した。

「俺が大きくしてやるから」

「しなくていいっ!」

 ふてくされて背中を向ける玲菜。

 

 レオは後ろからそっと彼女を抱きしめた。

「レイナ」

 だが玲菜は勘違いしてその手を退けようとした。

「しなくていいって言ってんでしょ?」

「違う」

 もう一度抱きしめ直すレオ。

「ありがとう」

「え?」

「お前、すげーよ」

 そういえば、彼はいつの間にかいつも通りの彼に戻っているよう。

「さっきまでの気分が嘘みたいに晴れて落ち着いている。お前ってなんか特効薬だな」

「特効薬?」

「ああ。お前が傍に居てくれて良かった」

 それは何より、玲菜にとって嬉しい言葉。

(私、役に立ってる?)

 彼の感謝の言葉に、玲菜は嬉しくて胸がいっぱいになり、涙が出そうになる。

(来て良かった)

 もしかしたら彼の気分を余計に沈ませるだけなのかもしれないと、不安にも思っていた。

 最近知った彼の心の傷は計り知れないから。

「レイナ」

 何より、彼の今の声は優しい。

 

 皇帝陛下が……彼の父親が亡くなった時。

 玲菜は、レオの複雑な心境を理解していてもやはり、皇帝の最期の言葉がレオと彼の母親の名で良かったと思った。

 御落胤《ごらくいん》である彼はきっと、自分が望まれて生まれた子なのか悩んだに違いない。

 けれど、言っても彼が苦しむだけなので言えないが、本当は愛されていたのだと確信できたから。

 それでも彼は辛い日々を過ごし、残酷な形で母親を失った。

 その悲しみは深く、父を憎むことで心のバランスを取っていたのだろう。

 だが、憎むべき相手も居なくなってしまった今、また心が不安定になってしまうのか。

(ううん。そんなことない。ショーンや朱音さんや黒竜さん、それにイヴァンさんだって)

 今の彼の周りには、本当の彼を理解して支えてくれる者がいっぱい居る。

(私も、特効薬になれる。これからもそうでありたい)

 玲菜は強く思う。

 この先自分は居なくなるとか考えてウジウジしたって仕方ない。

(私、もっと強くなろう。レオのために)

 望まない運命ばかりだったかもしれないが、紛れもなく彼は強い。

 今まで見た目ばかりが似ているのだと思っていた。

(違う。レオは本当にシリウスに似ているんだ)

 彼の強さと弱さ、いい所悪い所、すべてに自分は惹かれた。

(創世神だとか、この世界の人間じゃないとか、関係ない。私は私で、レオが好き)

 それもまた、紛れも無い事実。

 またきっと悩むし落ち込む。けれど、玲菜は前にショーンが自分に伝えようとしていた本当の意味が解ったような気がした。

 ――自分や大切な人の心を優先して行動することは悪い事ではない、と。

 そこに、誰かの許可なんて必要ない。

 

 玲菜は様々なことを思いながら彼の腕の中で眠りに就いた。


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